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中学二年生の早苗は、日々をなんとなく過ごしていた。学校に行けば話をきちんと聞いてくれる友人もおり、家に帰れば美味しい夕飯を作って母が待っていた。父も早苗には甘く、早苗自身それを自覚していたが、それはきっと当然なことなのだろうと思っていた。
悩みなど、最後に抱いたのはいつのことだろうか。友人のお陰か適度に勉強もし、成績でさえ不満はない。こんなにも円滑に人生を歩んでもいいものかという不安なら過ぎることもある。
「楽勝……♪」
いつしか口癖はそうなっており、本日のその口癖は、変わりそうな信号機に猛ダッシュで間に合ったから出てきたものである。
世界は早苗のために廻っているかのように錯覚させた。
「じゃあさくらちゃん、また明日ね!」
「早苗ちゃんも気を付けて帰ってねー!」
中学校に入学してから仲の良い友人のさくらに別れのあいさつをしたある日。
早苗は帰路の途中にあるガーデニングをしているお宅の玄関先に置かれた、植木鉢一杯の花を見つけ立ち止まった。
――あの植木鉢をひっくり返したらどうなるだろう?
――あの植木鉢の花を全部摘んだら、なんて言われるだろう?
「……あら、早苗ちゃん、こんにちは。」
「あ、こんにちは。」
実行に至る前に、当のお宅の奥さんが玄関から顔を出し、半ば強制的にご挨拶をするはめとなった。
仕方なく歩き出した早苗は空に浮かぶ雲を見た。
――あの雲が突然台風にならないかな。
――私が念じたらあの雲は一つ残らず消え去り、快晴にならないかな。
途端に車のクラクションが鳴り響く。
大驚きをして肩を大きく飛び上がらせた早苗は、状況を掴もうと周りを慌てて見回した。
小さな交差点におり、歩行者の信号機は赤であった。間一髪、早苗は事故に遭わずに済んだようだ。
しかし早苗は大きな溜息を着いてしまう。
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